Lotus paradise

Lotus paradise

Traditional Music

 50年も前だったら、ストーブのあるキッチンと寝室という2つの部屋からできてる家が多かったそうです。
 キッチンはちょっと大きめに作ってあり、何かのときに、家族や親族が集まっては、おはなしをしたり、うたをうたったり、楽器を演奏したり、その曲にあわせて、ダンスもしていたようです。
 長い冬に、娯楽のなかった時代の楽しみだったのでしょう。
 日本だったら、囲炉裡端といったところでしょうか?

 曲はべつに楽譜があるわけでもなく、またプレイヤーは楽譜が読めるというわけでもなく、耳から聞いておぼえていきます。楽器についても手に入りやすいものを、選んでいたようです。
 現在のクレア県あたりでの、特徴的な楽器といったら、コンサーティナでしょうが、これもサルベーション・アーミー(世界救世軍)などが使っていたので、そのまま転用されたようです。
 アイルランド音楽のおおきな特徴なんですが、いくらかの楽器で演奏するときに、基本はユニゾンです。つまり、ひとつの旋律をせーので、みんながプレイします。アコーディオンだって、フルートだって、フィドルだって同じ旋律を同じ早さで演奏するのです。
 ハーモニーという要素はありません。ここんとこ日本とも似ています。
 ふつう西洋人と一緒に歌った経験のある人は、感じていると思いますが、皆自分のキーのあうところで、適当にハモったりしますが、アイリッシュ・チューンは基本としてやりません。(モダンな今風のバンドは、ハーモニーをとりいれたアレンジもしますが....。)
 
 もしかして、あなたがちょっとアイリッシュ音楽ファンだったら、ギターの伴奏はとか、このあたりで、疑問が出てきそうですが、ギターやアイリッシュ・ブズーキがこれら伝統音楽にとりいれられるようになったのは、1970年あたりからです。たかだか30余年の歴史にすぎません。

 伝統音楽のメロディーのほとんどは、耳から耳へと伝えられ、多くの時間やプレイヤーのフィーリングといったフィルターをすり抜けてきたせいか、私のこころには、とても完成されたものに聞こえていて、嫌いな曲ってほとんどありません。
 いや、運指が難しいから、ちょっと敬遠してしまったり、ディテールが曖昧で、というのはありますが、嫌いっていうのは皆無ですね。
 曲の総数は7千曲だとか、もっと多いとか言われていますが、同じ曲でもリージョナルなバージョン違いや、タイトルが違うが同じもの、パートの一部が欠落したもの、あるいは付け加えられたものなど、数限りなく広がってはいくのですが、それでも皆がよく知ってる定番チューンみたいなものが、なんとはなしに存在し、ルールさえ守れば、どこでもセッションに参加して共に演奏できるのです。
 だからかな、他のジャンルのプレイヤーだったら、役割の決まったバンド形式で音楽をプレイしていくことが、普通でしょうが、ことアイリッシュに関しては、継続的にバンドを組むより、その場その場で、新たなメンバーとも演奏し、それが気に入れば続けるし、また別のユニットも平行してやってたり、かなり自由な展開になって行きます。
 そこに、また音楽産業が未発達であったこともあって、同じバンド名でアルバムが出ていても、全くちがったメンバーだったり、レーベルの移動も1枚ごとに変わってたりと、ややこしいことになってます。
 今の音楽産業界では普通になってる企画ものなど、収録された演奏とライブが別ってかんじが多いと思いますが、ことアイリッシュに関しては、スタジオのレコーディングの方がライブよりクオリティーが高いということはまずありません。
 
 あと先ほど同じ旋律をプレイすると書きましたが、ただ旋律をそのまま弾くのではなく、装飾音というのですが、ちょっとこぶしのように、プレイヤーは演奏することが認められています。というかこれがないと伝統音楽にはなりません。具体的には同じ曲を違う人が演奏するのを聞きくらべてみてください。



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